A present from God

壁掛け時計のアナログな音で日付が変わったことがわかった。
今までの人生で最高で、最良で、一番長かった、私の誕生日が終わった。
親愛なる女王陛下と守護聖の仲間が開いてくれたバースデイパーティは本当に素敵なひと時で、これまでの誕生日がいかに味気ないものであったのかを思い知った。
私の隣に彼女がいる。
ただそれだけで、すべての景色が違って見える。

金の髪の女王陛下がパーティの終わりを告げると、私は彼女と聖殿を出た。
みんなのくれたプレゼントで両手がふさがっている私のあとを、彼女はからかうようにステップを踏んでついてくる。
彼女を私邸まで送り届けるのはナイトである私の役目。
門まで着くと、彼女は振り返って言った。

「わたくしからのプレゼント、受け取っていただけますか?」
青いリボンのかかった小さな箱を手渡してくる。
「もちろん。」 
私は大げさなくらい大きく手を広げてその小さな箱を受け取った。
「お部屋に戻ってから、開けていただきたいんですの。」 
彼女の青い瞳が揺れて煌めいた。
「ん。わかったよ。ありがと。」 
彼女の唇にキスを落として私も家路についた。


みんなからのプレゼントを部屋の床に下ろすと、シャワーを浴びて、ソファに座った。
大切な彼女からのプレゼントはゆっくりと開けたい。
青いリボンをほどくと、箱から出てきたのは1枚のカード。
「窓を開けて。」 
青いインクで書かれた文字が目に飛び込んできた。
私が窓を開けると、彼女がいたずらな瞳で立っていた。
「入ってもよろしいかしら?」 
彼女の姿に私はガラにもなくドキドキしてしまう。
初めて部屋に来る日が窓からなんて、まるで質の悪いドラマみたいだ。
星の明かりに照らされた彼女はいつもの青いリボンを首に巻いていた。

「プレゼントを渡しに来ましたわ・・・。」 
ゆっくり彼女に近づく。
目が合うと、彼女の青い瞳は不安げに伏せられて、青紫の睫毛が震えた。
「受け取っていただけますか・・・?」
その言葉を聞くよりも早く、私は彼女を抱きしめた。

貴族として育った彼女がどういう教育を受けてきたか、私にもわかる。
だからこそどれほどの気持ちで今夜、私のところに来てくれたのか、その想いを受け止めたかった。

抱きしめていた時間がどれくらいだったのか、わからない。
抱き上げた彼女からは薔薇の香りがして、私は大きく息をついた。
ベッドに下ろして広がった青紫の髪のひと房に口づける。
そしてゆっくりと青いリボンを外した。
首筋に手が触れたとき、彼女が私の名前を呼んだ。
そのつややかな唇にそっとキスを落とす。

私のすべてを受け入れた彼女が一筋の涙を流した。
その涙を、私は決して忘れないだろう。


神様、今まであんたのことを信じたことなんて一度もなかったけど。
今日という日は、今という時間だけは。
私をこの世に送り出してくれたことに、
彼女をこの世に送り出してくれたことに、
何百年もの時を越えて私たち二人を巡り合わせてくれたことに。
心から、
感謝します・・・。

私の胸にもたれて眠る彼女をそっと抱き寄せる。
青紫の髪を指で梳くと、甘い薔薇の残り香がした。
このまま、この腕に閉じ込めて離したくないくらい、愛してる・・・。
この先もずっと。
あんたを離さないけど、いいよね?
そばに置いていた青いリボンをもう一度彼女の手首に結ぶ。

私にとって、彼女こそが、神様からの贈り物。


FIN
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