Collaboration of B'z × Angelique



Have it your way

『勝手にしやがれ(featuring 稲葉浩志)』( TAK MATSUMOTO 6th Album「THE HIT PARADE」 収録

Novel by S.Q.様   オスカー×ロザリア

ステレオの音量を上げ、壁にもたれかかる。
濃厚な琥珀の液体が喉から腹に向かって零れ落ちて行くのを感じていた。

虚空の中へ…。

味わう為でなく、ただ、この荒みきった心を麻痺させるために。
何が悪かったのか、どっちのせいなのか。
そんなことはもう、どうでもよくなってしまっていた。

彼女が扉を開けた瞬間に。
壁越しに、足音が遠ざかるのを聞いている間に。

「行ったきりなら幸せになればいいさ。」

冷気で曇った窓を擦り、風にあおられて鞄をギュッと抱え込む彼女の後姿を見つけて呟いた。

ほんの数分であっけなく片付いてしまった彼女の荷物。

伸ばした指先がガラスに阻まれる。



『戻りたくなったらいつでも、俺の胸は君のために空けてあるんだからな!!』

扉が閉まる直前に思わず唇が開きそうになった。

いや…。
その前にだって、何度振り向きかけたか知れない。

…分かっている。

僅かでも戻るつもりがあるなら、あの人一倍我慢強い彼女が出て行ったりしないことを。

もし、もう少し真剣に「愛している」と伝えたり、ちょっとした口げんかならば抱きしめたり…。
それだけのことで、埋められたかもしれない数々の小さな亀裂。
いつの間にか言葉はもろ刃の刃になって、彼女と俺自身とを傷つけていた。

車道をいくつものライトが行き交う石畳に佇む彼女が、いつになく小さく見えた。



想いを形に表せたら、彼女を連れ戻せる自信はあるのだ。
この胸からえぐり出し、あの薄い窓を突き破って、彼女の足下に投げつけたいと思うくらいに。

まだ完全に失ったわけではない。
今出ていけば間に合う。

いくつもの未練たらしい言葉が頭の中を駆け回る。

けれども、足の方はビクともしない。

無駄だと分かっているからなのではなく、体裁を保ちたいわけでもない。
ただ、彼女をこれ以上縛り付けるべきじゃないと、心のどこかがそれを許さないのだ。

彼女の後姿が、もうじき見えなくなる。
ピンと伸びた背中に、俺は最後の言葉を贈った。

Fin




S.Q.様より

このたびは素敵な企画に混ぜていただいて、ありがとうございます(^^)。
youtubeで沢田研二さんの「勝手にしやがれ」を稲葉さんがカバーしていらっしゃるのを見て、『うぉぉぉぉ!!これはオスカー様だ!!』と膝を打ちました(笑)。
曲のニュアンスとは微妙に違うのですが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。

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