ずるりと雄を取り出したオリヴィエは気を失ったロザリアの頭の下に腕を入れ、自分の胸に抱き寄せた。
まだまだ不慣れな彼女には、少し辛かったかもしれない。
オリヴィエには今夜の行為が、八つ当たりだという自覚があった。
最初にロザリアからこの1ヶ月の行動の理由を聞いたとき、オリヴィエにあったのは怒りだった。
自分の気持ちを信じてくれなかったのか、簡単に心変わりをするような男だと思われていたのか。
身を引いて、アンジェリークに譲るなんて、ロザリアの気持ちはその程度のモノだったのか。
そんな不満からの彼女に対する怒り。
けれど、彼女の心の内を聞いて、今度は自分が情けなくなった。
彼女のことを一番理解していると思っていたのに、本当の不安に気がついてあげられなかった。
補佐官として立派に勤め上げている姿だけを見て、傷が癒えていると勘違いしていた。
そんなオリヴィエ自身に対する怒り。
怒りの裏で情けなくて、どうしたらオリヴィエの想いが彼女に伝わるのかわからなくて。
『身体に教える』なんてうそぶいて、抱きつぶしてしまった。
「はあ、やっぱり情けないね」
気を失ったまま眠ってしまったロザリアの顔は、まだあどけない少女の面影を残している。
普段があまりにも凜と美しいから、守護聖として長い年月を生きてきたオリヴィエが、守ってあげなければいけない年齢なのを、つい忘れてしまうのだ。
冷静になればわかるのに、彼女の事を愛しすぎているから、理性が利かないし、欲望を抑えられない。
恋すると人は愚かになる、と言うけれど、今のオリヴィエはまさにその通りだ。
情けなくてバカで、どうしようもない。
オリヴィエは指でロザリアの額にかかる髪を左右に分けた。
かなり疲れていたのか、まるで目を覚ます様子は無く、安らかな寝息を立てている。
うっすらと汗が滲んだその額に、オリヴィエはそっと唇を落とし、再び強く腕の中に抱き込んだ。
絶対に手放したりしない。
逃げようとしたって必ず捕まえる。
オリヴィエも実のところは相当疲れていたらしい。
すぐに二人の寝息がそろって闇に溶け、月明かりだけが、白い光を鏡に映していたのだった。
翌朝。
鳥のさえずりにうっすらと目を覚ましたロザリアは、目の前に広がる素肌に頬を赤くした。
一糸まとわぬ姿で、オリヴィエの腕にしっかりと抱きしめられ、足まで絡め取られている状況。
なんでこんなことに?!と少し焦って、昨日の夜のことを思い出したロザリアは、ますます顔が赤くなってしまった。
気を失ったまま眠ってしまったのも恥ずかしいし、その前のあれこれは・・・もう思い出さない方が賢明だろう。
まだオリヴィエは眠っているようで、胸板が規則的に上下している。
一見細身なのに、彼の胸板にはしっかりと筋肉がついていて、良く鍛えられていることがわかる。
普段のあのひらひらした服装の下がこんなに男性的だなんて、ロザリアも想像してなかった。
もぞ、と身体を動かして、ロザリアは下半身がごわごわしていることに気がついた。
肌も全体的に汗ばんでいるし、髪も心なしかべたついている。
そういえば、昨夜はシャワーも浴びずに、ベッドに押し倒されたのだ。
このままでは気持ちが悪い、と、ロザリアはオリヴィエの腕をそっとずらし、するりと抱き枕状態から抜け出した。
身体を起こすと、下半身がまだじんわりと痛いような、むずがゆいような、じんとした感覚が残っている。
何か着るものを探したけれど、昨日のワンピースは部屋の片隅に散らばっていて、取りに行けばオリヴィエを起こしてしまいそうだ。
それにどうせ下着は汚れていて、もう一度着けることは不可能に違いない。
少し悩んで、ロザリアは近くに落ちていたオリヴィエのシャツを借りることにした。
快感の残り火なのか、立ち上がろうとしても上手く足に力が入らず、よろけながらなんとかバスルームに向かった。
シャワーで汗を流すと、さっぱりと生まれ変わったような気持ちになる。
香りの良いオリヴィエのシャンプーを借りて、優雅な気持ちで髪を洗っていると、突然、後ろから抱きすくめられた。
「きゃ!」
思わず飛び上がって驚くと、いつの間にかオリヴィエが背中にぴったりとくっついていて、にっこりと笑っている。
「私もシャワーを浴びようと思ってね。そうだ、ついでだから、あんたも一緒に洗ってあげるよ」
ボディーソープのポンプを数回押し、手のひらでもこもこのあわを作ったオリヴィエは、自分の身体とロザリアの身体に泡を塗りつけ始めた。
なんだかイヤな予感がして、
「いえ、よろしいですわ」
ロザリアが断っても、オリヴィエは鼻歌交じりでどんどん泡を作っている。
作っては塗り、作っては塗り。
二人ともが泡まみれだ。
けれど、始めこそただ塗るだけだったオリヴィエの手は次第に卑猥な動きに変わり、気がつけばロザリアの胸を揉んでいる。
手のひらで包まれ、泡と一緒にやわやわと揉みしだかれると、頂きがつんと硬くなってきた。
「ココも綺麗にしないとね」
ぬるぬるとした泡で頂きを摘ままれ、ついロザリアは甘い吐息を漏らしてしまった。
こうなれば、もうオリヴィエの思惑通りだ。
「ん?ここはもうぬるぬるしてるのかな?」
足の間を探り、割れ目の中に指を入れてぬるぬると動かすと、泡と蜜が混ざり、彼女が感じてきているのがわかった。
今日は土の曜日。
休みはまだあと丸2日ある。
シャワールームで後ろからしたら、浴槽の中では彼女を膝に抱いて、向かい合ってしよう。
それから、もういちどベッドにもどって、たくさんキスをして、裸のままじゃれ合って過ごせたら最高だ。
夜はまた彼女が気を失うまで頑張るし、明日はキッチンやテラスでしてみるのもいいかもしれない。
青空の下で喘ぐ彼女はきっととても美しいだろう。
無駄に広い邸に二人きりで、外から覗かれる心配も無いから、好きな時に好きな場所でできる。
この休みの間、できるならずっと繋がっていたいけれど。
「・・・二ケタはさすがにムリかな」
ぽつりと呟いたオリヴィエの不穏な言葉は、シャワーの音にかき消されて、ロザリアの耳には届かなかったのだった。
FIN / INDEX