パルク・ディマンシュで過ごした後、エンジュを送り届け、館への道を歩きながらふと夕暮れの空を見上げた。
温かいオレンジと、鮮やかなピンク、切ない青、穏やかな黒。
一枚のなかに広がる極彩色は、まるで彼女のようだと思い、そう思った自分に苦笑いがこみ上げた。
何度かこうして二人の時間を過ごし、そのたびにくるくると変わる表情や温かい笑顔、真剣に見つめる瞳に目を奪われる自分がいた。
「このオスカーとあろうものが、一人の少女から目が離せないなんて・・・な。」
試練をいくつも乗り越るたび、次第にエンジュは光り輝くような魅力を放つようになった。
この俺を捕らえて離さないくらいに。
そして、ふとした風景のなかに彼女を探すようになって、同じよう彼女を見つめるほかの視線にも気がついた。
「悪いが、本気で行かせてもらうぜ。」
・・・・・他の奴にくれてやる気など、さらさらない。
空に向かってそう呟くと、また歩き出す。
初夏の強い風が、マントを大きく揺らした。
Fin