Sleeping Pretty

6.


日の曜日。
真っ白なワンピースを着たロザリアは、ランディに連れられて、森の湖に来ていた。
静かな森の湖は、ゆっくりと話をするのに適している。
景色も美しく、空気も心地よい湖はロザリアもお気に入りの場所で、気持ちを落ち着かせたいときに、よく一人でも訪れている。
おしゃべりをしながら、湖のほとりまで歩いてきた二人は、滝が一番美しく輝くところで足を止めた。
そこから滝を見ると、光の差し込む角度がちょうどいいのか、水の飛沫がいつでも小さな虹を作っているのだ。

最初にそのことを教えてくれたのはリュミエールだっただろうか。
それほど時がたったわけでもないのに、なぜか記憶は曖昧だ。
誰とここへ来て、どんな話をしたのか。
ただ頑張って笑っていたことだけはしっかりと覚えているのだけれど。
誰かとここへ来るたびに、こうして虹を見て、にっこりと笑う。
それだけで、あのゼフェルでさえ、「キレーなもんだな。」と感心してくれた。


「綺麗だね。」
やはりランディも感動したようにそう呟いた。
「ええ。 本当に飛空都市は綺麗なものがたくさんありますわ。 きっと聖地も素晴らしいのでしょうね。」
ランディを見つめながら、にっこりとほほ笑む。
オリヴィエの言った通り、この程度の仕草なら、すでにロザリアの一部のように、当たり前にできるようになってきているのだ。
さっとランディの顔が赤くなって、静寂に包まれる。
ふわりと風に揺れるゆるく巻いた青紫の髪。
真っ白なワンピースを着たロザリアはまるで森の精のようだ。
ランディはじっとロザリアを見ていたかと思うと、小さくつぶやいた。

「…本当に素敵だ。」
「ええ。 癒されますわ。」
「君が。」
「えっ?!」
ビックリして目を丸くしたロザリアに、ランディの方がびっくりしたように飛び退った。

「あ、俺、何言ってんだろう?! オスカー様みたいな・・・恥ずかしいよな。
 でも、本当の気持ちなんだ。
 最近のロザリアは、その、すごく、前と変わって、綺麗なんだけど、可愛くなったっていうか。
 眩しくて、はは・・・。」
最後の方はしどろもどろで恐らく自分でも何を言ってるのかわからなくなったのだろう。
頭を掻いて、動きまで止まってしまっている。

「初めのころのロザリアは、ちょっと厳しいし、しっかりした女の子だなって思ってたんだ。
 俺も怒られたことあったし。 でも、ホントに、最近は…。」
ランディの澄んだ青い瞳がロザリアを捕らえる。
ずきん、とロザリアの胸に痛みが走った。

「まあ! ランディ様、 あそこで魚が跳ねましたわ!」
瞬間、滝の向こうで小さく上がった水しぶきにを指さして、ロザリアは楽しそうな声をあげた。
ランディの服の裾を軽く引き、気を向けるのも忘れない。
「あ、本当だね! 向こう岸へ行ってみよう。」
ランディは今の今までの話の内容などすっかり忘れたように、水しぶきの方を気にしている。
もともと話をするよりも、体を動かす方が得意なランディだ。
さっと走って、向こうからロザリアを手招きしてきた。
「こっちに魚がいるよ!」

屈託のない笑顔で、大きく手を振るランディ。
まっすぐで眩しいのは、ランディがとても伸び伸びしていて、楽しそうだからだ。
その笑顔を見ていたロザリアの手がぎゅっとスカートを握りしめる。
褒められて、嬉しいはずなのに、なぜかランディの言葉の続きを聴きたくないと思った。
最近可愛くなったのは、ロザリアがそうなりたいと頑張っているから。
無理して、本当の自分に蓋をして。

ふとロザリアは湖に映った自分の姿を見た。
その姿はたしかに自分のなりたかった『可愛い』がたくさん詰まっている。
けれど。
白いドレスを着て王子を騙そうとする、黒鳥のように見えてしまうのは、なぜだろう。


「『カワイイ』って年齢や見た目の事じゃないんだよ。」
お茶の時間に何気なく、オリヴィエに言われた言葉。
上手く行かないメイクに悪戦苦闘していたロザリアへの慰めの言葉だとばかり思っていたけれど。
あの時のオリヴィエの顔は、なんとなく、ロザリアを切なくさせた。
チクチクと刺さる棘をオリヴィエは気づいていたのかもしれない。

メイクやドレスは魔法が解ければなくなってしまう。
ほんのひと時だけの仮の姿だ。
魔法が解けても無くならないのは、本当の自分自身だけ。
もしも黒いドレスのままを愛してくれる王子様がいたら、きっと黒鳥だって、白いドレスなんて着なかったに違いない。
だれだって、本当の自分のままで愛されたいと願っている。


「ランディ様! わたくし、急用を思い出しましたの。 申し訳ありませんけれど、失礼させていただきますわ。」
「ええっ?!」
湖に手を突っ込んで、魚を取ろうとしていたランディが驚いて立ち上がる。
「何か気に障ったのかい? 俺…。」
「違いますわ! 道に迷っていたんですの。 でも、やっと前に進めそうですわ。」
「え? どういう意味?」
焦るランディに向かって綺麗な淑女の礼を返したロザリアは、そのままくるりと踵を返すと、駈け出した。

たぶん、すぐに追いかければ、ランディの足ならゆうゆうと彼女に追いついただろう。
けれど、なんとなく、ランディはその場から動かなかった。
淑女の礼をしたロザリアの笑顔。
今までのデートで向けられたどの笑顔よりも、すごくキレイで、キラキラしていた。
彼女が何を考えているのか、正直ランディには全く分からない。
けれど、ロザリアにとって、それが大切なことだというのはよくわかった。
「道に迷った、ってどういう事かな…? 」
ここへ来るまで、そんなに困ったことはないはずだが…。
思わず、今日の帰り道を頭で確認してしまうランディなのだった。



白いワンピースの裾がふわふわと靡いている。
こんなに走ったのはいつ以来だろうと思いながら、ロザリアはひたすらに足を動かした。
ぺたんこのバレエシューズはトウが丸くて可愛いけれど、走るのには向いていない。
ようやく目指す屋敷の門の前にたどり着いた時、ロザリアの額には汗が浮かび、すっかり呼吸は荒くなっていた。
息を整える間も惜しんで、玄関を潜り抜け、リビングのドアをノックすると、中から 「はあい。誰?」と、いつもと変わらない彼の声がする。
もどかしい思いで、飛び込んだロザリアは、目を丸くしているオリヴィエの前に立った。

「どうしたの? ランディは? 今日、デートだったんじゃないの?」
だらしなく足を組んでソファで雑誌をめくっていたオリヴィエは、飛び込んできたロザリアの様子に目を丸くした。
真っ赤な顔で肩で息をしているロザリア。
きっと走ってきたのだろうと想像するに難くない。
おかげで、昨日、念を入れて見立てたワンピースとメイクもすっかり乱れてしまっている。
いったい、デートで何があったのか。
彼女の気持ちをここまで乱すようなこと。
たとえば、愛の告白でもあったのではないか、と、オリヴィエは苦い予想を飲み込んだ。

「ええ。さっきまで、森の湖でご一緒しておりましたわ。」
息を弾ませながら、それでもはっきりとロザリアは言う。
全ての事情を知っているからなのか、『可愛い』を追及しているロザリアも、オリヴィエの前ではずっと今まで通りだった。
顔をあげて、まっすぐに瞳を見て。
凛とした彼女、そのままの姿。
空へ向いて伸びる大輪の花のようで、とても綺麗だ。

「オリヴィエ様。 あの、青いワンピース、まだお持ちですか?」
「え? …ああ、まだあるよ。 いつもの部屋に。」
一面がクローゼットになった奥の部屋が、いつもオシャレの研究で使っている部屋だ。
たくさんの服やメイク道具も全てその部屋に置かれていて、ちょっとしたサロンのようになっている。
「お借りしても?」
「いいけど…。 一体どうしたの?」

オリヴィエの質問の途中なのに、ロザリアはさっと身をひるがえして、奥の部屋へと入って行ってしまう。
ぽかんとしたままオリヴィエは仕方なく、元通りにソファに座り、放り出した雑誌をめくってみた。
けれど、もちろん内容など頭に入るわけもない。
慌てた気配。突然の着換えの要求。
まさかランディに限って、と思いながらも、悪い想像が頭の中を駆け巡る。
やがて。
再びドアが開いて、今度はおそるおそるといった雰囲気でロザリアが顔を出した。


「オリヴィエ様。 見てくださいませんか?」
ドアの隙間から滑るように現れたロザリアは、青いワンピースをまとっている。
白い肌をますます白く見せる綺麗なブルー。
すらりと伸びた足が引き立つようなティアードのスカート。
オリヴィエが想像していた以上に、ワンピースはロザリアによく似合っている。

「すごく似合ってるよ。」
当たり前の言葉しか出てこなくて、オリヴィエは苦笑した。
眩しそうに目を細めたオリヴィエに、ロザリアは恥ずかしそうにスカートを摘まみ、頬を染めている。
「ありがとうございます。」
膝を折り、淑女の礼をしたロザリアを、オリヴィエは不思議な気持ちで見つめた。
さっきまでと雰囲気が違うのは、メイクを落としたせいだとはわかっている。
チークなんかつけなくても、バラ色に染っている頬や、瑞々しい果実のような唇。
可愛らしい、とは確かに違うけれど、まるで朝咲いたばかりのバラのような澄んだ美しさが彼女にはある。

「綺麗だね。」
素直にオリヴィエは口に出した。
たぶん彼女が望むのは『可愛い』の一言だろう。
けれど、オリヴィエは『キレイ』のほうが、彼女にはふさわしいと思っている。

「キレイ、ですの?」
やっぱりロザリアは少し不満そうに眉を寄せている。
それでもオリヴィエは
「ん。 キレイ、だよ。」
笑ってそう答えた。

美しさをつかさどる夢の守護聖が、こんなところで嘘をつくわけにはいかないという変な意地。
それに、心のどこかで、これでロザリアに嫌われるならそれでもいいという気もあった。
想いを隠し続けるのにも疲れたし、きっと、彼女はこれからもどんどん『可愛く』なって、いろんな男とデートをしたりするだろう。
そのたびにこんな風に棘を抱えるのに、もうすぐ耐えられなくなる。


それきり黙っているオリヴィエに、ロザリアはにっこりと笑いかけた。
それは可愛く見えるような上目遣いの笑顔ではなくて、まっすぐな飾り気のない笑顔。
「オリヴィエ様。
 ありがとうございます。」
「え?」
オリヴィエは思わず聞き返していた。
ありがとうと言ったロザリアの気持ちがわからない。

「わたくし、ずっと、自分の容姿が嫌いでしたわ。
 ブスで可愛くなくて、お世辞以外は誰も褒めてくれたことなんてなくて。
 でも、オリヴィエ様にいろいろ教えていただいて、少しは変われたと思いますの。」
少しどころかすごくだ、と言いたかったけれど、オリヴィエは黙って頷いた。
「守護聖様方とも、デートをしたりお話する機会も増えましたし、皆様も褒めてくださいましたわ。
 だから、オリヴィエ様にはとても感謝しているんです。」

感謝のありがとう、かと、オリヴィエも納得する。
まるで卒業の挨拶みたいだ。
王子様を見つけた彼女は、もうここへは来ないのかもしれない。
魔法使いの仕事もいよいよ終り。
ふっと目を細めたオリヴィエにロザリアは大きく首を振った。

「でも、それだけではありませんの。」
「違うの?」
オリヴィエの疑問にロザリアは困ったような笑みを浮かべる。

「わたくしは『可愛い』女の子になれば、それでいいと思っていましたの。
 アンジェリークのようになれば、きっと皆さまに好きになってもらえる、と。
 でも、それは本当のわたくしではないんですわ。
 だから、褒められても素直に嬉しいとは思えませんでしたの。」

ランディに『可愛い』と言われた時、ロザリアは自分が情けなくなった。
無理して頑張って、それは、ランディを騙していることになるのではないかと思ってしまったのだ。
そして同時に、いつでもロザリアの真実の姿を見てくれていた人のことを思い出した。
白よりも青が似合うと言ってくれた人。
魔法をかける前も、かけた後も、同じように、『可愛い』と言ってくれる人。

はにかむように、ロザリアはふっと睫毛を伏せ、柔らかく微笑んだ。
この胸にある、暖かな気持ちは、きっと特別なもの。
オリヴィエは最初から、ロザリアのそのままを見てくれていた。
そして、誰も気がついてくれなかったロザリア自身に手を差し伸べてくれたのだ。
オリヴィエと過ごした時間は魔法のように、ロザリアの願いをかなえてくれた。
でも、もう彼を魔法使いだなんて思えない。

「わたくし、もう『可愛い』を頑張るのは止めることにしますわ。
 みんなにどう思われても、オリヴィエ様が『可愛い』とおっしゃってくださるなら、それだけでいいんですの。
 わたくしにとって…。」
ごにょごにょと聞き取れなくなっていく言葉。


「なんだって?」
意外な言葉を聞いたような気がして、オリヴィエはロザリアを見つめた。
オリヴィエがなりたいと思っていた存在。
もうとっくに諦めていた『それ』に、なれたと思っていいのだろうか。
にわかには信じられない。
ところがそんなオリヴィエの凝視をロザリアは別の意味にとったらしい。
顔を真っ赤にしてスカートをぎゅっと握ったかと思うと、そのままくるりと踵を返した。

「あ、ちょっと待って!」
オリヴィエの制止の声に耳も貸さず、聞こえてきた返事は、ドアの閉まる音。
呆然としたオリヴィエの頭の中に、ロザリアの最後の呟きが蘇ってきた。
 
『わたくしにとってオリヴィエ様が王子様ですの。』
…聞き間違いなんかじゃ、ない。

「まったく、もう。 ホントに可愛いったらありゃしない。
 おまけに言いたいことだけ言って、私には何も言わせてくれないんだから。」
それでも明日からは、今までと何かが変わっていることだろう。
とりあえずはネイルから始めようか。
フレンチからラメグラデにして。
彼女の細い手がよりキレイに見えるように。
ロザリアが忘れていった白いワンピースを手にしたオリヴィエは、こみ上げてくる笑みを抑えることができず、いつの間にか大きな声で笑っていたのだった。



翌日。
「おい。 おめー、なにやってんだ?」
背後からかけられた声に、ロザリアはビクッと体を震わせた。
「ゼフェル様。お静かになさって。 今、大切なところなんですの。」
「なんだ?」
壁際から目だけをのぞかせて、向こうの様子をうかがっているロザリアの様子がおかしくて、つい声をかけたゼフェルだったが、彼女に促されて覗き込んだ光景に息をひそめた。

向こうにいるのは、アンジェリークと…オスカー。
なにやら押し問答を繰り返しているらしく、
「オトナの女性って、どういう人ですか?」
「もう、リボンをつけるのは止めたんです!」
適度にあしらう感たっぷりのオスカーに対して、アンジェリークの元気な声だけがやけに聞こえてくるのが、妙に悲しい。

ゼフェルはため息交じりにロザリアを振り返ると、ロザリアは口をへの字に曲げて、肩をすくめた。
「リボンとかそういう問題ではないと思いませんこと?」
「まーな。」
「オスカー様のどこがそんなにいいのか、わたくしにはわかりませんわ。
 …ゼフェル様、どうかお気を落とさないでくださいませね。」
「は?」
キョトンとしたゼフェルにロザリアはいかにも気の毒そうな顔をして見せた。

「アンジェリークのこと、お好きなんでしょう?」
「なんでだよ!」
ゼフェルのあまりにも鋭いツッコミに、ロザリアは唇に人差し指を当て黙らせると、じろりと彼を睨み付ける。
まっすぐな青い瞳はとても冷ややかだ。
ゼフェルもイライラとロザリアを睨み付け…頬を赤くしてそっぽを向いた。

「おめー、元に戻ったんだな。」
「え?」
ポカンとするロザリアに、ゼフェルはにやりと笑みを浮かべた。
「最近のおめーは、なんか、なよなよして気持ち悪かったからよ。
 そうやって、しゃっきりとにらんでる方が、おめーらしいぜ。」
「まあ!」
怒りで顔を赤くしたロザリアに、ゼフェルはなぜか嬉しそうにしている。

「また、今度の日の曜日、ウチに来いよ。
 こないだのアレ、改造したんだぜ。 しょーがねーから見せてやってもいい。」
「しょうがないってなんですの? こちらこそ、見てあげてもよろしくてよ、ですわ!」
「くっ。 やっぱり、おめーは可愛げがねー。 でも、オレはそういうおめーが気に入ってんだ。」
「ゼフェル様?!」


アンジェリークのことを忘れて、大声でうろたえているロザリアを背中に、ゼフェルは元来た廊下を小走りに戻って行く。
つい、ウキウキしてしまうのは、久しぶりにロザリアの本音の顔を見たからだ。
「やっぱ、おもしれーよな。 アイツ。」
くねくねした女には興味がないが、ロザリアは別格だ。
可愛げがないところが、カワイイ。
けれど、その笑みを、ゼフェルは不意に引っ込めた。
見上げたゼフェルの視線の先には、オリヴィエが面白くなさそうな顔をして立っている。
「あんただけじゃねーよ。 って、オレの方が早くアイツに気づいてたからな! 割り込んでんじゃーねー!」
言い放ち、ゼフェルは足早にオリヴィエの横をすれ違っていった。

「ハッピーエンドはまだ遠いか。」
オリヴィエの口からこぼれるのは、長い長い溜息。
廊下の向こうでは、アンジェリークに見つかったロザリアが、落ち込む彼女を必死で慰めているのが見える。
「うわーん、ロザリアああ。」
「まったくしょうがない子ね。 …大人っぽくなりたいなら、こんな風に泣いちゃダメでしょう?」
「だってええ。」
よしよしと慰める姿は、やっぱりアンジェリークの姉のようだ。

「大丈夫よ。 あんたは可愛いんだから。
 ランディ様もゼフェル様もオリヴィエ様も、あんたのことを好きって言っていたわ。」
聞こえてきた言葉をすぐに訂正する気力もない。
あんな告白をしてきたというのに、まだロザリアはオリヴィエがアンジェリークを好きだと思っているのだろうか。
考えてみれば、ゼフェルもかなりかわいそうなヤツ、かもしれない。


物語なら、お姫様を目覚めさせた王子が、彼女を得て終わるけれど。
現実は敵も多く、まだまだ先は長い。
それでも。
「ロザリア、最近、ますます綺麗になったよね。 いいなあ。
 …オリヴィエ様のおかげ?  わたしも教えてもらいたい~。」
鼻をぐずぐずさせたアンジェリークが小首を傾げながら尋ねた言葉に。
「あら、あんた、知らないの?…女の子は恋をすると、綺麗になれるんですわ。」
そんな返事が聞こえてきたから、今は満足しておこう。

「お姫様を完ぺきに目覚めさせるには、キスが必要だしね。」
二人がこちらに歩いてくる気配を感じて、オリヴィエは慌てて、その場を離れたのだった。


Fin


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