Lover's Talk

1.

先週の土の曜日はちょっと飲みすぎてしまった。
アンジェリークと二人の久しぶりの女子会。
朝方までおしゃべりをして、気が付いたら眠っていた。
その翌朝、起きた時の衝撃は、ロザリアの人生の中でもベスト3に入るくらいのものだったと言っていい。
明かりも消さず、部屋中散らかり放題。
こんなところをオリヴィエに見られたら、軽蔑された上にフラれるに違いないと思われるほどの惨状。
慌てて片付けて、私邸に戻った時はすでに夕方で、何もできずに一日が終わってしまっていた。
…本当に楽しかったから、それは仕方がないと思ってはいるのだけれど。

そのせいなのか、なんだかこの一週間は調子が悪かったような気がする。
コピーを取り忘れたり、書類の行く宛てを間違えたり。
いつもなら考えられないような凡ミスが続いて、そのたびに慌てて対処する羽目になって。
そのおかげで、どうしても仕上げられなかった書類を自宅に持ち帰ることになってしまった。
残業してもよかったのだけれど、それができなかったのは…。


「はい、ロザリア。 ちょっと休憩したら? 紅茶淹れたよ。」
机の上にそっと置かれた紅茶のカップは、ロザリアの一番お気に入りだ。
真っ白な磁器に透けるような青い花が柔らかく浮かんでいて、紅茶の水色がとても映える。
「ありがとう。 オリヴィエ。」
つい笑みが浮かぶと、オリヴィエも「どういたしまして。」とウインクを返してくれた。

「ごめんなさい。せっかくの金の曜日ですのに…。」
二人で過ごす週末はとても貴重な時間なのだ。
性格なのだから仕方ないけれど、ロザリアは人前でいちゃつくのが苦手だった。
アンジェリークなどは常にジュリアスにメロメロしていて、喧嘩するのもイチャイチャするのも公然としているけれど、そんなことは絶対にできない。
むしろ、好きであるればあるほど、そっけなくなってしまう、困った性格。
そのあたりは恋人であるオリヴィエもよく理解してくれていて、執務の間は特別な関係を匂わせることはしてこない。
新入りの女官であれば、まず二人の関係に自然と気づくことはないだろう。
だからこそ、恋人として堂々と過ごせる週末は、ロザリアにとっても楽しみな時間なのだ。

ゆっくり紅茶を含むと、特有な甘みとスモーキーな苦みが一気に口の中に広がった。
今のように疲れた時にぴったりの味わい。
「美味しい。」
「ありがと。」
微笑み合って、ゆったりと紅茶を飲む。
小さくため息をついたロザリアは、じっと注がれるオリヴィエの視線に気が付いて顔を上げた。

目があったとたんにオリヴィエの唇が降りてきて、チュッと軽く音を立てる。
静かな部屋にリップ音が響いて、ロザリアの頬が染まった。
キス以上の行為をするようになって、しばらく経つのに、まだキスが一番気恥ずかしい気がするのは、どうしてなのだろう。
鼓動が跳ね上がって、触れ合った唇が熱くなって。
とてもオリヴィエの目をまっすぐ見たりできない。
もちろん、今日の異常なまでのドキドキ感は、それだけではないのだれど。


「どうかしたの?」
真っ赤になって俯いてしまったロザリアをオリヴィエは優しく抱きしめた。
椅子に座っている彼女と同じ目線になれるようにと、膝をつき、じっとその青い瞳を覗き込む。
キレイなブルー。
ロザリアの瞳がとても綺麗なのは、単にその青が美しいだけじゃなくて、純粋な魂がその中に映しこまれているからだと思う。
けれど、今日の瞳にはほんの少しの…微妙な感情が混じっているようだ。

「言いたいことがあるなら言って? 邪魔だったら帰るし。」
彼女ががんばって執務をしている間、オリヴィエはのんびりとネイルの手入れをしていた。
この頃、爪を伸ばさないようにしているから、チップを愛用しているのだが、それが意外に爪を痛めてしまうのだ。
必要なケアとはいえ、ロザリアにしてみれば、遊んでいるようにしか見えないだろう。
「いいえ! 違いますの…。 執務ならもう終わりますし。」

もぞもぞと言い淀む姿は珍しい。
恥ずかしがりやなロザリアだけれど、素直でまっすぐな性格だから、言いたいことははっきり言うし、むしろキツイ物言いが多い。
それが誤解される種でもある。
そんな彼女が、言葉を失くしたように、ただじっとオリヴィエを見つめている。
何か言いたいことがあるのは間違いないのだけれど。
オリヴィエは無理に聞き出すことをやめて、再びキスを落とした。


「ん…。」
触れ合わせるだけにしようと思っていた口づけを次第に深いものへと変えていく。
激しく吸い上げると、ロザリアが空気を求めて、わずかに唇を開いた。
その隙に強引に舌先をねじ込み、彼女の舌をとらえ、絡め合わせる。
彼女の吐息も唾液の一滴まで、余すところなく、自分の中へ閉じ込めるのだ。
キスひとつだけで思い知るのは、オリヴィエ自身が彼女のたった一筋でさえも、どこへも逃がしたくないと思っていること。

溢れた唾液を喉の奥まで飲み込む。
彼女にもまた、同じように飲み込ませる。
もうどちらのモノかもわからないそれは、甘露の滴になって互いののどを潤していく。
不慣れな彼女が苦しげな声をあげたので、ぺろりと顎裏を舐めて、一度唇を離した。
濡れて光る唇が艶めかしくて、すぐにまた唇を重ねる。
たどたどしく応えようと絡ませてくる舌が愛おしくて、つい、深く口内を探ってしまい、また彼女に苦しそうな顔をさせてしまった。
苦笑して唇を離し、今度は首筋へ。
甘く耳たぶを食むと、ロザリアの体がぴくんと跳ねた。

「耳、弱いね。」
吐息交じりに囁くと、ロザリアは子供のように、いやいやと首を振る。
寄せられた眉と硬く閉じられた瞳はたしかに拒絶しているように見えるけれど、こぼれる艶めいた声が彼女の本当の気持ちを教えてくれる。
耳の穴の奥にまで尖らせた舌先を入れ、ゆっくりと舐めあげる。
時折ふっと息を吐けば、ぴくぴくと震える体。
ロザリアはぎゅっとスカートを握りしめ、快楽に耐えているようだ。
耳を犯しながら、オリヴィエは掌でロザリアの胸を包み込むと、やわやわと揉み上げた。

「やっ…。」
声を出そうとしたロザリアだったが、オリヴィエの舌先が耳の最奥をついた刺激で体が跳ねる。
「ホントに耳弱いね。」
くすくすと笑みをこぼすオリヴィエにロザリアの顔の熱が上がる。
オリヴィエの手は胸を弄り続けてはいるものの、先端には触れてこない。
それなのに、いつのまにか先端は固く立ち上がり、下着に擦れるたびに痺れるような快感を与えてくる。
オリヴィエの指先がつん、と先端を押しただけで、今までで一番大きく体が震えてしまった。

「ふふ。もう固くなってる。」
服の上からなのに。
オリヴィエが先端を軽く弾くたびに、ロザリアの息が荒くなる。
「ん…。」
キュッと摘み上げられると、とうとう抑えきれずにロザリアが声をあげた。


自分の声が恥ずかしいのか、ますます真っ赤になって俯いてしまうロザリアの顎を持ち上げ、強めに唇を吸い上げる。
オリヴィエはそのままロザリアの背中のジッパーを外して、一気に彼女の両腕を抜いた。
解放されるようにふるりとこぼれおちる膨らみ。
華奢な体に不似合いなほど大きな胸を押さえつけている下着も、一緒に取り去ってしまえば、真っ白な素肌が現れた。
恥ずかしそうに胸を隠そうとする彼女の手を引きはがし、先端を口に含む。
舌先で転がし、吸い上げる。

「あっ…あっ。」
こぼれる声を自分の手で押さえてしまうロザリアが可愛すぎて、つい夢中になって味わった。
片方は口で、片方は指で。
別々の刺激を交互に与えながら、もちろんキスもして。
オリヴィエの愛撫に翻弄されて、次第に青い瞳に艶めいた光が灯っていくのがたまらない。

こんなに貪っていては、ロザリアに呆れられてしまうのではないか、という不安がオリヴィエの頭によぎる。
本当はもっと余裕をもって愛したい。
彼女の望むように、ベッドに入って、明かりを消して、優しいキスから始めて。
いつだって、そう思いながら、この部屋にやってくるのに。
一度、ロザリアに触れてしまうと、とたんに頭が沸騰したように夢中になってしまう。
その瞳も、唇も、魂も、全部。
オリヴィエという存在で満たしたくなって、他のことなど何も考えられないようにさせたい。

女なんて飽きるほど抱いてきた。
正直ほとんど飽きていた。
挿れて、出して。 その繰り返し。
せめて相手でも変わってくれないと、本当に退屈で、ほとんどが一夜限りの関係だった。 
それなのに、ロザリアは抱いても抱いても、足りない。
一晩で抱きつぶすほど繰り返しても、また翌日には欲しいと思ってしまう。
自分がこんなに何かに執着するだなんてありえない。
何度も否定して、押さえつけて。
けれど、それが本心なのだとわかってからは諦めた。


オリヴィエはロザリアの膝裏を抱えると、両足を自分の肩に乗せた。
正しい姿勢で座っていたロザリアの体がずっと前に引き出されて、オリヴィエの目の前で足を開き、下着を見せる格好になる。
「やっ!!」
羞恥心から体をよじると、椅子から転がり落ちそうになり、慌ててロザリアは椅子の座面に両手でしがみついた。
その勢いで大きく胸が揺れ、恥ずかしさのあまりに体がすくむ。

「動いちゃダメだよ。ホントに落ちちゃうからね。」
不安定な姿勢を支えるように、オリヴィエは顔を足の間に寄せた。
そのままするりと舌を伸ばし、下着の上から花芯をつつく。
電流のような刺激にびくんとロザリアの体が跳ね上がり、オリヴィエの頭を手で押しのけようとした。
けれど、不安定な姿勢のせいか、その手にはほとんど力が入っていない。
押しのけるどころか、まるでオリヴィエの頭にしがみついているようにも見えるほどだ。

「ふふ、もっとしてほしいの?」
すでに耳まで赤くなっているロザリアが弱弱しく首を振る。
別に落ちたところで大したケガをするとも思えないのに、なんとなく落ちたくないと思うのが人間の性というモノ。
オリヴィエが花芯をつつくたびに、ロザリアは体を震わせ、反射的に座面を掴んでいる。
まるで後ろ手に拘束してでもいるかのような姿態.。
オリヴィエは自身にも熱が溜まってくるのを意識していた。

下着の上から亀裂に沿って舌を這わせる。
すでに中はぐっしょりと濡れ始めていて、オリヴィエの舌に合わせて唾液と蜜がまじりあい、布地がその部分に張り付いていく。
くっきりと現れた花芯に吸い付くと、「きゃあ!」と、悲鳴のような声が上がり、がくがくと足が震えだした。
「ぐっしょりだよ。 ホラ、わかる?」
指で布地を秘所に押し込み、くにくにと動かした。
ますますぷっくりとした花芯が浮かび上がってきて、オリヴィエは舌先でそれを舐めあげる。
入り口と花芯を同時に責められ、ロザリアは声を出すこともできない。
布地越しの優しい刺激がもどかしく思えて腰を揺らしたロザリアにオリヴィエが囁く。

「どうしてほしいの? 言ってくれないとわからないよ。」
指で花芯をやわらく擦り上げると、そのたびに肩に乗せたロザリアの足が大きく跳ねる。
「このままでいいの? ねえ。」
爪先でひっかいて、指の腹で撫でて。
ロザリアが感じすぎないギリギリのラインを掠めるように愛撫を繰り返す。
中途半端に与えられる快楽は、ロザリアを追い詰めているのだろう。
しきりに首を振り、唇をかみしめようとするのに、オリヴィエが指を動かすたびに、声が抑えられないのだ。

「どんどん染みてきてるよ。 こんなふうにされて、気持ちイイの? 」
オリヴィエの声にロザリアの理性が溶け出していく。
首を横に振ることも忘れて、ただ体をよじる。
それは拒絶というよりも、もっともっととねだっているようにも見えた。

「素直じゃないんだから。 でも、…あんたのそういうところも可愛くて…たまんない。」
余裕を見せようとしても、声がかすれる。
オリヴィエは器用にロザリアの片足を下着から抜き去った。
すうっと冷たい空気が触れて、自分の姿態を理解したロザリアは、慌てて足を閉じようとしたがオリヴィエの頭に阻まれてしまう。
ロザリアの内腿に挟まれたまま、オリヴィエは濡れそぼった秘所に舌を伸ばした。

「ああ…。」
花芯を甘く絡めとられて、ロザリアは腰をくねらせた。
強すぎる刺激に頭の奥がしびれてしまう。
オリヴィエが溢れる蜜を吸い取り、尖らせた舌先で刺激を繰り返していると、ロザリアの足がピンと伸び、全身ががくがくと震えだした。
「あ、あ・・。」
乱れていくロザリアに、オリヴィエの方が夢中になって攻め続ける。
もっと感じさせたい。
ちゅう、と強く吸い上げた瞬間、ロザリアが声をあげ、大きくのけぞった。

「ふふ、イッたね? こんなに溢れさせて、イヤらしいよ。」
蜜で濡れた唇を手の甲でぬぐい、オリヴィエは微笑みかけた。
快楽でうつろな青い瞳。
赤く染まった頬。
乱れるロザリアは眩暈がしそうなほどキレイで、もっともっと乱れさせたくなる。

まだひくついている場所に、今度は、つぷりと指を差し入れる。
さっき彼女を傷つけないように爪の手入れをしたばかりの指先が、きゅっと締め付られた。
溢れる蜜を指先に塗り、花芯も同時にこすり上げる。
まだまだ彼女の身体は開かれ始めたところで、中だけでイくのは難しい。
指で中を探り、ざらついた箇所を押し付けると、ロザリアの体がびくんと震える。
ぎゅっとひときわ中が締めあがって、また奥からトロリと蜜があふれ出した。

「またイッた?」
ロザリアはとろんとした瞳のまま、小さく頷く。
もう反論する気力もないのだろう。
大きく肩を上下させ、息を乱している。
オリヴィエは再び秘所に唇を寄せ、今度は舌で中を探った。


ロザリアはオリヴィエの愛撫に文字通り翻弄されていた。
頭の奥で何度も光がはじけ飛ぶ。
「ああ!」
恥ずかしい個所をオリヴィエの目の前に晒して。
そればかりか、舐められて、指で弄ばれて、感じてしまって、こんなにも声をあげて。
恥ずかしさでどうにかなりそうなのに…もっとしてほしい。
自分はいつからこんなにみだらになってしまったのだろう。
なにもかも、彼に与えられたもの。

何度目かの絶頂の後、とうとう今まで体を支えていた腕から力が抜けた。
手も足もまるで力が入らない。
倒れ込んだロザリアをオリヴィエの腕が抱きとめる。
そのまま、かるがるとロザリアを抱きかかえたオリヴィエは、ベッドの上に彼女の身体を横たえた。


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