唇を重ね、舌を絡める。
キスだけで十分に気持ちがいい。
ロザリアもうっとりしたようにオリヴィエにされるがままだ。
ここでようやく、オリヴィエは自分が服を着たままだったことに気が付いた。
彼女のワンピースも胸をはだけただけで、お腹のあたりでくしゃくしゃに丸まっている。
また怒られちゃうかな、と、苦笑しながら、ロザリアの足からワンピースを引き抜き、ベッドの下へと放り投げた。
シーツの上で見事な曲線を描くロザリアの裸身。
見ているだけで、自身が硬く張り詰めるのがわかる。
「いや…。」
じっと見られていることに気がついて弱弱しく、両手で顔を隠すロザリアの胸の先端に口づけた。
どこもかしこも敏感になっているのか、わずかに唇が触れただけなのに、体が跳ね上がる。
「隠さないでよ。 今日は、感じてるあんたの顔を見せて。」
さっきの椅子の上での姿態が脳裏をよぎる。
ロザリアのあんな顔を見ることができるは自分だけ。
自分の手で彼女が乱れていく様を見ていたいと思うのも、一つの独占欲なのだろう。
オリヴィエはロザリアの両手首をまとめ上げると、自分の首から外したスカーフをぐるぐると巻きつけた。
両手を軽く縛るような形に、ロザリアが驚いたように目を見開く。
おびえた青い瞳に、怖くないから、という言葉の代わりに激しく唇を奪い、手で体をなぞっていった。
「ん、ん。」と漏れる快楽の声に励まされて、ゆっくりと掌を滑らせ、秘部へ指を忍ばせる。
何度もイッて、すっかりほぐれた場所は、もちろん、しっとりとした蜜をたたえていて。
浅く指を入れると、食いつきそうなほど締め上げられた。
逸る手で自身の服をようやく剥ぎ取り、ロザリアを見下ろす。
そろそろ見慣れただろうに、恥ずかしそうに目を逸らす彼女に愛おしさがあふれてきた。
オリヴィエは彼女の羞恥心を煽るように、
「私が欲しい? 」 と、尋ねる。
嫌だと言われたところでやめられないだろうけれど、欲しい、と、言われたい。
オリヴィエはロザリアの足を大きく広げ、彼女の入り口に高ぶりを押し付けた。
ぬるぬるとした蜜に滑らせて花芯を刺激すれば、ロザリアからは熱い息がこぼれてくる。
「…欲しいって言ってくれないと、挿れてあげないよ?」
キュッと眉を寄せ、蕩けそうな瞳でオリヴィエを見上げる瞳。
その眼は彼女の願いを確実に伝えてくるけれど、それでは意味がない。
ゆるゆると先端を花芯に滑らせると、ロザリアの腰が逃げようとする。
それをぐっとつかんで、さらに強めにこすりつけた。
「どうしてほしい? …私にどうされたい?」
初心なロザリアをあまり苛めるのも可哀想で、ほんの少し逃げ道をあげる。
「…あなたの好きにして…。」
「あんたが欲しい。」
言うなり、ぐっと腰を押し付けて、ロザリアの中に高ぶりを押し挿れる。
「あああっ。」
快楽に満ちた声と同時に、ぎゅっと締め付けが強まって、彼女が達したことがわかった。
「もうイッちゃった? ホントに、イヤらしいね。」
何か言っていないと、自分が持っていかれそうで、オリヴィエはわざと言葉で嬲る。
「そんなこと…。」
恥ずかしそうにロザリアが首を振ると、大きな胸もオリヴィエを煽るように一緒に揺れている。
誘われるまま、そのふくらみに、いくつも赤い花を散らした。
押し入ったロザリアの中は暖かくて、奥へ奥へと誘い込むように蠢いていて。
あまりの快楽で目がくらみそうなほど…気持ちがイイ。
「いやあ・・・。」
両手を拘束されて、いつものように声を隠すこともできないロザリアはただ喘ぎ続けている。
深く突き上げて、腰を回して、彼女の全部を探り当てて。
オリヴィエ自身も眩暈がするほどの快楽に包まれる。
「うそ。 嫌じゃないんでしょ?
だって、あんたのココは、私を締め付けて、離してくれないじゃない?」
蕩けるように熱いロザリアの中がオリヴィエの理性を吹き飛ばしてしまう。
優しくしたい…けれどそんな余裕はとても持てそうもない。
大きく引き抜いて、突き上げると、ロザリアの体が跳ねた。
「ホラ、すごい音。」
わざとかき混ぜて、水音を大きく響かせる。
耳を塞げないロザリアの全身が真っ赤に染まり、羞恥のせいか、ぎゅっと体が硬くなった。
嫌がっているようにも見えるのに、奥からは蜜が一層溢れてきて、しっとりとオリヴィエを包み込むのだ。
「オリヴィエ…。」
瞳を潤ませて、揺すられるまま、びくびくと背を反らして、快楽を受け入れるロザリア。
清楚で淫らで、夢じゃないかと思うくらいに、愛おしい。
ずっとこうして、繋がっていられたらいいのに。
突き上げた先から溶けて、彼女に同化して、離れられなくなってしまえたらいいのに。
そうすれば、永遠にロザリアをそばに置いておける。
くっついてしまえ、というように、激しく腰を打ち付け、抽送をくりかえした。
同時に花芯を指でこすり、何度もロザリアを高みに押し上げる。
もっと深く、もっと深く。
えぐるたびに快感がオリヴィエの全身を駆け巡る。
体を重ねることがこんなに気持ちのいいものだと、ロザリアを抱くまで知らなかった。
心と体と溶け合って、一つになって。
愛し、愛されていることを心の底から実感できる。
「あああ!」
ひときわギュッと彼女が締め付ける。
すぐにオリヴィエも最奥へと熱を開放した。
ぐったりと力なく横たわるロザリアの腕の拘束を解き、抱き寄せて胸の中へと閉じ込める。
甘えるように頬を寄せてくるロザリアの髪の一房を手にしては口づけを繰り返した。
「ロザリア…。」
愛おしさがあふれて、名前を呼ぶのが精一杯だ。
柔らかな身体の感触に幸せを実感して、声が詰まる。
だから想いを全部キスに代えて、ロザリアの全身にくまなく落としていく。
最後に再び唇を触れ合わせると、彼女はまるで花が綻ぶように笑った。
「言いたいことがあるんでしょ? 言ってごらん。」
ロザリアを腕に抱いたまま、快楽の余韻が引いていくのを待っているオリヴィエが口を開いた。
今日のロザリアはいつもと少し違っていた気がする。
椅子の上での愛撫も、あんな拘束も、今までなら、泣き出すほど嫌がっただろう。
けれど、今日は、恥じらいながらも、オリヴィエの欲望を受け入れようとしてくれていた。
つい調子に乗って、やり過ぎてしまったことは自覚しているが。
「アンジェが…。」
「陛下が? なんか言ったの?」
こくりと、頷いて、ロザリアの手がオリヴィエの背中に回った。
ぎゅっと胸に頬を寄せ、まるでオリヴィエの鼓動を確かめるように、寄り添っている。
「オリヴィエが、わたくしを、とてもとても愛している、と…。
その、激しすぎるのも…愛情表現だ、と言われたんですの。」
ロザリアだって、オリヴィエに抱かれることはキライではない。
ただ恥ずかしくて、どうしていいかわからないだけだ。
アンジェリークにそう打ち明けると、彼女は笑って教えてくれた。
「ロザリアが本当にイヤなことは、ちゃんと言えばいいと思うの。
オリヴィエはめちゃくちゃロザリアが好きだと思うから、絶対に嫌がることはしないはずよ。
まあ、話を聞く限り、ちょっと激しいな、とは思うけど。
それが愛情表現と思えば、男の子ってなんかかわいいな、って思っちゃうわよね。」
ジュリアスももうちょっとね~、と、アンジェリークはブツブツとこぼしている。
「でも、すごく恥ずかしい恰好をさせられるんですのよ。
せめて、明かりを消してくれたらいいのに。」
ロザリアはグラスを傾け、ごくごくと中身を飲み干した。
ワインの酔いが心地よくて、つい口が滑る。
いつもなら言いにくいことも、なんでも言えてしまう。
「恥ずかしがってばっかりじゃダメよ! もっと、自分に素直にならなくちゃ!
って、わたしも同じかもしれないな…。
ジュリアスに、したいって言えないんだもん。
うん、わたし達、もっと愛されてるって自信をもとうよ!」
「自信…?」
首をかしげたロザリアにアンジェリークはグッと拳を握った。
「そう。
もし、わたしがちょっと変なことをしたとしても、きっとジュリアスは許してくれると思うのよ。」
アンジェリークが変なのはいつものことだから、と言いたかったが、ロザリアはその言葉を飲み込んだ。
キラキラしたアンジェリークの瞳。
時々、だが、アンジェリークの言葉には有無を言わせない説得力を感じることがある。
そんな時、ロザリアはやはり彼女は女王なのだと、友情とは別の尊敬を抱くのだ。
本当に、時々、なのだが。
「オリヴィエも同じよ。
ロザリアのこと、大好きなはずだもの。
ささいなことで嫌いになったりなんかしない。
たとえば、喘ぎ声がちょっとくらい大きくたって、感じやすくて濡れすぎだって。」
「ちょっと! わたくし、そんなことありませんわよ!」
いったい、アンジェリークはどんな想像をしてるのだろう。
「あ、ごめん。 たとえば、のハナシだから。」
なぜか、うんうんと頷いたアンジェリークはあっさりとロザリアの抗議をかわした。
「とにかく、ね。
大丈夫だと思うの。
素直にロザリアの思うようにしてみても、オリヴィエは絶対に受け入れてくれるから。
だから、ロザリアもオリヴィエのことを受け入れてみたら?
ヘンな事もいっぱいあるかもしれないけど、きっと、イヤな事じゃないはずよ。」
その通り、だと思った。
オリヴィエはロザリアが本当に嫌だという事は絶対にしない。
からかったり、意地悪なことを言っても、傷つけるようなことは言わない。
愛されている、と思ってもいいのだろうか。
自信なんて持てるはずがないけれど、少しくらいなら。
「だから、今日は、あなたの好きなようにしてほしいと思いましたの。
あなたの思うようにわたくしを愛して、わたくしも素直に…。」
恥ずかしがり屋のロザリアにとって、それはとても大変な勇気だっただろう。
椅子の上で大きく足を開かせた時も、両手を縛った時も。
おびえながらも瞳を潤ませて、熱っぽく、オリヴィエを見つめていた。
オリヴィエは胸の中で、小鳥のように体を硬くしているロザリアの頭に口づけた。
愛おしいと思う気持ちが、この唇から彼女に伝わるように、何度も、何度も。
「好きだよ。 …ああ、もう。 こんな言葉じゃ、足りない。 どうしようか?」
ぎゅっと強く抱きしめると、ロザリアも恐る恐る抱き返してくる。
包み込むように抱き合うのは、欲望だけではなくて、その存在のすべてが愛おしいからだ。
「ねえ、私の思うとおりにばかりしてもらったんじゃ、私の気が済まないからさ。
あんたの望みも言ってみて。
私ができることなら、なんでもしてあげたいよ。」
彼女が欲しいと望むなら、月だって取って来れそうな気がするから不思議だ。
「え…。 でも…。」
腕の中のロザリアはもじもじとためらうばかりで、なかなか言い出そうとしない。
言いたいことがあるのはわかっているのに。
オリヴィエは内心、笑いながら、ロザリアの言葉を待った。
なんとなく、今なら話してくれそうな予感があったのだ。
「怒りませんこと?」
「うん。 怒らない。」
「本当に怒りません? 嫌いになったりも?」
「なあに? そんなにすごいこと? 逆に気になって仕方ないんだけど。」
大丈夫だよ、の返事の代わりに、オリヴィエはロザリアの額に唇を落した。
「…傍にいてくださいませ。 ずっと、だなんて言いませんわ。 …あなたが嫌になるまでで…。 ん!」
ロザリアの唇を塞いで、それ以上の言葉は言わせないことにした。
怖がりな彼女が心配していることは、よくわかる。
でも、その不安は、彼女だけが持っているものじゃない。
気持ちなんて、何の保証もない。 目に見えるものですらない。
言葉でいくら語っても、完璧に分かり合うことなどできやしない。
だからこそ。
「そばにいるよ。 あんたが嫌だって言っても、ずっとね。」
「わたくし、嫌だなんて絶対に言いませんわ。」
「ん? それはわからないでしょ? ま、そんなのどっちでもいいか。 嫌でも嫌じゃなくても、ずっと、って決めてるし。」
変わらないものなんて、この世界には一つもないとわかっているのに、なぜか、この気持ちだけは変わらないと信じてしまう。
きっとこれを恋の魔法というんだろう。
こんなバカバカしい恋人たちの睦言を、まさか自分が言うようになるだなんて。
胸の奥がくすぐったい。
でも、それが・・・心地良いのだから重症だ。
オリヴィエの掌がふくらみを柔らかく揉み始めて、ロザリアはわずかに体をよじった。
それを追いかけるように、オリヴィエの指先が胸の頂を摘まみ上げる。
こりこりと指で擦り、掌全体で掬い上げるようにふくらみを揉まれると、さっきまでの快楽の残り火が、すぐにロザリアの体を熱くさせた。
「ん…。」
漏れてしまった甘い声に、ロザリアの頬が羞恥で赤くなる。
オリヴィエは構わずに、胸へ刺激を与え続けた。
先端を口に含み、吸い上げては舌先で転がす。
そして、ロザリアの下半身へと片手を滑らせた。
「お、オリヴィエ?」
とうとう堪え切れなくなったロザリアが、両手でオリヴィエの手の侵入を抑えた。
「なあに?」
オリヴィエはキレイな微笑みを浮かべながら、抑えられた手の指先だけを動かして、ロザリアの茂みをなぞっている。
性的な動きに、ぞくりと甘い痺れが這い上がり、ロザリアの体が震えた。
「あの、もしかして・・・? また・・・?」
それ以上は言いにくいのか、ロザリアは潤んだ瞳でオリヴィエを見上げている。
そんな顔をしたら、かえってオリヴィエを煽ってしまうという事に、なぜ気がつかないのだろう。
本当にいろんな意味で心配になる。
「さっきのは先週の分。
今からが、今日の分だからね。 でも、嫌なら嫌、って言っていいんだよ?
ね、本当に嫌?」
オリヴィエの指がするりと秘所に滑り込むと、淫らな水音が聞こえる。
嫌がってはいないことを教えられたようで、ロザリアは両手で顔を覆った。
「…もう、オリヴィエの、意地悪。」
言葉で伝えきれないから、求め合うことで実感するしかないのかもしれない。
ちらりと机の方へと目を向けたロザリアは、開いたままの書類や散らばったままのペンに眉を寄せた。
飲みかけだった紅茶もすっかり冷めてしまっているだろう。
あと少しだった執務をきちんと終わらせるべきか。
せめて、机の上だけでも、片づけておくべきか。
ここでオリヴィエの体を押しのけて、机に向かうこともできるけれど。
「愛してるよ。」
本当にオリヴィエはずるくて、意地悪で、ロザリアをダメにする悪い人。
でも、その一言で、こんなにも幸せな気持ちをくれる、最高の恋人。
「わたくしもですわ。」
ロザリアは目を閉じると、オリヴィエに体を寄せて、自分からキスをした。
そして、素直な心で…。
執務を放棄することに決めたのだった。
FIN