The opening world with you

2.

オスカーは掌でロザリアの体をなぞっていった。
なめらかな肌は見事な曲線を描き、オスカーの掌に吸い付くようだ。
腰から双丘を撫で、腰のあたりにまとわりついたままの夜着の下から手を滑り込ませた。
下着越しにロザリアの秘所に指を這わせると、彼女が息を飲んだ。
胸への長い愛撫で、下着はわずかに湿り気を帯びている。
オスカーは花芯に布を押し当てると、やわやわと指をこすりつけた。

「ああ…。」
抑えきれない声が、ロザリアの唇からこぼれる。
再び唇を重ね合わせ、下着の上からゆっくりと花芯の刺激を続けた。

布越しでもはっきりと花芯が膨らんだのがわかるようになると、オスカーはまとわりついていた夜着と一緒に、彼女の足から下着を取り去った。
生まれたままの姿で、ベッドに横たわるロザリアの姿は、妖艶なほどに美しい。
白い体を飾る青紫の髪も、快楽に火照るバラ色の頬も。
もちろん形としても美しいに違いないが、それ以上に。
愛おしい存在だからこそ感じる美しさ、なのだろう。

腿を数回撫で、オスカーはロザリアの花芯に直接指を当てた。
すでに十分な刺激を与えていても、まだオスカーの指にはわずかな蜜が絡みついてくるだけだ。
オスカーを受け入れるには程遠い。
さらに指を這わせ、膨らんだ部分をつまみ上げると、ロザリアが小さな悲鳴を上げた。
初心な彼女の体はささやかな刺激にも敏感に反応するらしい。
慎重にオスカーが指の腹でこすり上げ続けると、控えめにでも少しづつ潤んでくるのがわかる。
ようやくなめらかに指が動かせる程度になってきたのを確かめて、オスカーは唇の端を上げた。
花芯を撫でながら、指を彼女の中に沈めようとした時。
ロザリアの体が硬く凍り付いた。


眉をぎゅっと寄せ、体を固くしたロザリアに、オスカーは思わず指を引いた。
明らかにロザリアは拒絶の反応を示している。
花芯に触れれば、甘い吐息を感じるのに、それ以上進もうとすると、とたんに体が硬くなり、オスカーの指を押し戻すのだ。
指先には、暖かな蜜が絡みつき、ランプの光がきらりと輝いている。
蜜をなめとったオスカーは、ぎゅっと目を閉じているロザリアの瞼にやさしく唇を寄せた。

「どうした?」
オスカーに問われて、ロザリアは初めて自分がぎゅっと目を閉じていることに気が付いた。
「力を抜いてくれ。 …それともなにか、気に触ることでも?」
心配そうに見下ろすアイスブルーの瞳。
いつも自信に満ちて、不遜なほどの瞳が、ロザリアのためだけに揺れている。
彼の深い愛情を感じて、ロザリアは眉を開いた。

「ごめんなさい…。 
 たぶん…。この間、とても…。あの、痛かったんですの。
 それをつい思い出してしまって。 嫌ではないの! 本当ですわ。」

無意識だった、と言われて、オスカーはロザリアの体を強く抱きしめた。
初めての彼女に、とても辛いことをしてしまったことはわかっている。
十分に準備をしないまま、強引に侵入したせいで、きっと彼女の心も体も傷つけたのに違いない。
痛みの記憶が恐れとなって、ロザリアは体を硬くしてしまうのだ。

「ロザリア…。」
許しを請うのは簡単だろう。
オスカーが跪けば、きっとロザリアは微笑んで許してくれる。
けれど、それで罪が消えるとは思えない。
この行為が痛みではなく悦びを与えるのだと、彼女に知ってもらう以外、方法はない。


「・・・!。 あ、いや…。」
オスカーはロザリアの腿を抱え上げると、潤んだ秘所に唇を寄せた。
数多くの夜を女と過ごしてきたが、それはオスカーにとっても初めての行為だ。
ロザリアに与えた傷を少しでも癒したいと思ったら、体が勝手に動いていた。
舌と唇で優しく刺激を与えていくと、さっきまでよりもロザリアから蜜があふれてくるのがわかる。
「やめて…。」
恥ずかしさのあまり、よじって逃れようとするロザリアの身体を、オスカーはしっかりと抱えて離さない。

「母上から教わらなかったか?
 痛いところは舐めると早く治るんだぜ。」

あふれる蜜を吸い上げては舌先で花芯を舐め、唇で挟む。
ロザリアからこぼれる喘ぎ声に、オスカーは夢中になって貪った。
与えられ続ける快感に、次第に声を出すことも難しくなったのか、ロザリアは荒い息を吐きながら、オスカーのなすがままに体を預けている。
やがて、ロザリアの体がびくんと跳ねたかと思うと、大きく背を反らした。
「いやっ。」
身体の奥がしびれて、自分の意思とは関係なく足が震えてしまう。
初めて感じた絶頂にロザリアは涙をこぼした。


「怖いか?」
ぐったりとしているロザリアの秘所に指を当てたオスカーは、彼女の入り口を確かめるように指を這わせた。
すでに蜜のあふれた場所は、オスカーの指を招くように震えている。
差し入れれば、彼女の体は素直に受け入れてくれるはずだが、心はどうだろう。
少しでも不安があるのなら、無理はしたくない。…もう二度と。
ロザリアは一瞬、身を固くしたが、じっとオスカーを見つめた後、柔らかくほほ笑んだ。

「オスカー…。 愛していますわ…。」
ロザリアの細い指が緋色の髪にそっと触れる。
その声に、オスカーはゆっくりとロザリアの中に指を沈めた。
慣れていないせいか、指一本でも硬く押し返してくる感触。
それでもさっきまでのように、ロザリアから拒絶の意思は感じられない。
何度か出し入れを繰り返し、ざらついた箇所を擦る。
漏れ始めた声に甘いものを感じ取ったオスカーはロザリアの足を押し開くと、まだ絶頂に震えている場所に、自身の昂りを押し挿れた。


狭いロザリアの中は、十分潤っているのに、動かすのがつらいほどだ。
見下ろせば、やはりロザリアはギュッと眉を寄せ、浅い呼吸を繰り返している。
辛そうな姿に胸が痛む。
それでもオスカーの視線に気づいたのか、ロザリアはうっすらと目を開けた。
「大丈夫か?」
動かさなくても、一度達したロザリアの中は蠢いてオスカーを刺激してくる。
普通なら、それだけでイってしまうところだが、我慢できるのは経験豊富なおかげだと、オスカーは変なところで自分自身を褒めていた。

「ええ…。 あなたがわたくしの中にいるのがわかりますわ…。 あなたでいっぱいになっているみたい…。」
「ロザリア…。」

幸せそうなロザリアの笑顔に、オスカーは思わず唇を寄せていた。
愛おしさがあふれて、逆に言葉が出てこない。
何度も何度も繰り返し、ついばむようにキスを繰り返すと、ロザリアの体から力が抜けてくる。
オスカーはゆっくりと腰を動かし始めた。

「ん…。」
まだ多少の痛みはあるのかもしれない。 悦びだけではない声色をロザリアから感じ取った。
けれど、一度動き始めた体は、もう意志だけで止めることは難しい。
オスカーはさまざまな角度からロザリアを突き上げ、少しでも彼女の反応があった個所を責めていった。
「ああ…。」
少しづつロザリアの声が艶を帯びてくる。
蜜があふれ始め、オスカーに絡みついてくるように、締め付けがきつくなってきた。
白い肌がバラ色に染まり、甘い吐息がこぼれてくる。
オスカーが最奥をつくと、ロザリアが大きくのけぞった。
ようやく快感を感じてくれたのか、と、下で喘ぐロザリアに満たされた気持ちになった。

オスカーはロザリアが一番声を上げる場所を何度か突き上げた。
激しすぎる快楽にすでにロザリアはぐったりとしてしまっている。
もう少し、彼女を感じていたかったが、オスカー自身も限界だった。
それに初めからオスカーのペースに合わさせるのは酷だ。
徐々に慣れていけばいい。
時間はいくらでもあるのだから。

オスカーは腰を動かしながら、花芯を指でこすり上げた。
「あんっ。」
2度目の絶頂はロザリアにより深い快感を与えたらしい。
悲鳴のような声が漏れたかと思うと、中がきゅうと締まる。
とうとう耐え切れず、オスカーも彼女に熱を吐き出したのだった。


吐き出したはずなのに、ロザリアの中のオスカーはまだ硬く昂っている。
それでもゆっくりとオスカーは自身を彼女から抜き去った。
オスカーとしてはこのままもう一度彼女を得たかったが、こんな状態で2回目を要求することはできない。
ロザリアは疲れ切った様子で目を閉じ、肩で息をしている。
激しすぎたかもしれないと、と、後悔したが、彼女の顔に笑みが浮かんでいるのを見て、オスカーも自然と笑みが浮かんできた。
しばらく、寄り添ったまま、ロザリアを腕の中に抱き込み、オスカーは彼女の髪を撫でた。
汗で額に張り付いた髪を指先で取ると、ロザリアはくすぐったそうに体をよじっている。
飾り気のない笑顔がまるで花のようで。
オスカーは、今までに感じたことのない、幸せという言葉に全身が包まれるような気がした。



「飲み物でも取ってこよう。」
オスカーが体を離そうとすると、ふいにロザリアの手が伸びてきて、首にしがみついた。
「あなたが好き。 わたくし、とても幸せですわ。 アンジェたちもきっと、こんな気持ちだったんですのね。」
2か月の間に、オスカーは女子会のことを聞いていた。
初体験まで語り合うとは、男同士とはまた違った女同士の恐ろしさを感じたものだ。

「まさか、俺のことも話すつもりなのか?」
アリオスはともかく、他の男たちに負けているとも思えないし、別に話されて困るようなこともないが、多少の照れはある。
「そうですわね…。でも…。」
「でも?」
ロザリアは少し困ったように目を伏せ、頬を赤らめている。

「わたくし、あなたのことを誰にも話したくないんですの。
 だって、もしかして、みんながあなたのことを好きになってしまったら、困ってしまいますでしょう?」
「それは随分と嫉妬深いんだな。 それとも俺に信用がないのか?」
オスカーは小さくため息をついた。
簡単に浮気をするような男だと思われているのだとしたら。
今までの言動では無理もないが、少し寂しい。

「いいえ。 わたくしが不安なだけですわ。
 あなたはとても素敵だから、女性のほうがきっと放っておいてくれませんもの。」
恥ずかしそうにオスカーの胸に顔をうずめたロザリアの背にそっと触れる。
シーツをまとっただけのなめらかな肌を、オスカーはあやすように撫でた。

「君はわかっていないな…。」
ロザリアを見る男たちの目。
その憧れと欲望の混じった目が、どれほどオスカーにとって忌々しいものなのか、きっと彼女が気づくことはないだろう。
つまらない噂の一つ一つさえ、無視できなかった以前のことも。
思わずふっと笑みをこぼしたオスカーを、青い瞳が不思議そうに見つめている。

「ロザリア。 
 俺が君に渡せるものは、たった一つだ。」
「一つ? なんですの?」
胸の中のロザリアを、オスカーは優しく抱き寄せた。

「俺の未来。 
今、この時からの俺のすべてを君に捧げよう。 …嫌とは言わせない。」

言葉を塞ぐように、そのままロザリアの唇を塞ぐ。
目を閉じたまま、小さく、それでもしっかりと頷いたロザリアに、オスカーはこれ以上はないという幸せな笑みを浮かべたのだった。


全ての未来が君とともに。
今日が新しい世界の始まり。


Fin
Page Top