いつもと違う夜に

うららかな聖地の午後3時。
女王アンジェリークと補佐官のロザリアは恒例のティータイムを楽しんでいた。
執務の間は立場もあり、なかなか二人きりでゆっくりと話すことができないが、このティータイムだけは候補のころに戻っておしゃべりするのだ。

「ねえ、ロザリア~。」
アンジェリークがロザリアの入れた紅茶のカップをソーサーに戻して話しかけた。
「なによ、今日の紅茶はキームンよ。あんたには少し苦みがあった?」
「う~ん、確かにちょっと苦いかも…。じゃなくて!」
全くどっちが女王かわからない。アンジェリークが頬杖をついてロザリアをみる。
「わたし達って、あとどれくらいここにいるのかな~。」
「そうねぇ。あんたのサクリアはすごいし、まだまだ衰えそうもないわね。あと10年はいるんじゃないの?」
ロザリアは平然と答える。
おかしなことを言い出すのも毎度のこと。
「もしかしてサクリア喪失?!」なんてわけがないことはとっくに判っていた。

「て、ことは、ここ出たらわたし達28歳くらいにになっているよね。それまで彼氏ナシか~。
ねえ、私たち、大丈夫かな?」
「なにがですの?」
身を乗り出してくるアンジェリークにいささか引き気味にロザリアは尋ね返す。
「だ~か~ら~。このまま男女交際一切なしで下界に戻るでしょ?そっから彼氏作ったり、まして結婚するなんてできると思う?
ロザリアだって今まで誰とも付き合ったことないんでしょ?そんな経験値ゼロでいいと思うの?」
「え、それは・・・。」
さらにロザリアに顔を近づけて、アンジェリークの力説は続いた。
「もう、許婚だっていないんだよ?いい男を探すスキルは今のうちからもっとかないと!」
すっくと立ち上がったアンジェリークはロザリアに人差し指を突き付けて高らかに断言した。
「わたしたち、男女交際についてもっと学ぶベきだわ!」

そして、ロザリアに1枚のチラシを差し出す。
ペーパーには「合コンパーティー」の文字と、その詳細が書かれていた。
「え?」
「あのね、これ、わたし付きの女官の子にもらったの。二人で行こうよ~。このままじゃ大変なことになっちゃうもの。
ね、ロザリアも一緒よ。その子に聞いたら、聖地の人でも女王府の限られた人しか私たちのカオなんてわからないって言ってたわ。 
だから、ちょっといつもよりかわいくして男女交際について勉強しちゃお!」
唖然とするロザリアにアンジェリークは天使の微笑みで言った。
「もう、申し込んどいたからね。あ、守護聖たちには内緒よ。」
にこにこしたまま、続ける。
こうなったアンジェリークに逆らえないことは今までの経験上よくわかっていた。
「でも、もしどうしても相談したいなら一人だけにしてね。すぐ、広まっちゃうから、口の堅そうな人よ。」
アンジェリークは踊りだしそうな勢いで椅子に戻ると、猛然と執務を片づけ始めた。


(誰に相談しようかしら?)

オリヴィエ? or ゼフェル?

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