6.
連れていかれた先は一番奥の寝室。
もちろんオリヴィエをこの部屋に入れたことはなかったけれど、狭い屋敷のことだから、簡単にわかってしまったのだろう。
小さなサイドテーブルと、一人掛けのソファ。
それから、部屋の真ん中にベッドが一つあるだけのシンプルな部屋。
一人で眠るには大きすぎるキングサイズのベッドは、生家から持ち込んだ物だ。
補佐官になる時に、好きなものを何でも持っていい、と両親から言われた。
もっと高価なものもたくさんあったのに、ロザリアが選んだのは、このベッド。
でも、この屋敷で本当に一人ぼっちだと実感した時、ベッドを選んでよかったと心から思った。
ここだけは昔と変わらずにあって、どんなに辛いことがあっても眠ることだけは出来たから。
ベッドサイドのイチゴのクッションは、女王試験の時にアンジェリークにもらったものだ。
全く好みじゃないのに、なぜか捨てられない。
アンジェリークの部屋にもロザリアがプレゼントした薔薇のクッションがあって…。
なぜ今こんなことを考えてしまうのだろう
とにかくいろんなことが頭の中でグルグルと廻っていて…思考がまとまらない。
ベッドの上にふわりと投げ出されたロザリアに、オリヴィエが重なる。
永遠に続くようなキスの雨。
彼の華やかな香りが、麻薬のようにロザリアを包んで、ためらいや羞恥心までを奪って行って。
夢見心地で舌を絡めあい、唇を触れ合わせた。
オリヴィエの手が、ロザリアの背中に伸びていく。
するりと外されたファスナーから、むき出しになる肩。
その肩にもオリヴィエの唇が降りていき、ロザリアの豊かなふくらみが掌で包まれる。
服の上から、やわやわとふくらみを揉みしだかれ、先端を爪先でカリカリとこすられると、そこから電流のような刺激が立ち上ってきた。
鎖骨から胸元までゆっくりと降りてくる唇や優しいタッチで触れる指先がロザリアの肌を這うたびに、生まれてくる不思議な感覚。
くすぐったいのに、不愉快ではなくて、むしろもっと触れてほしいと思う。
「あ…。」
思わず口から出た甘い声に、ロザリアは恥ずかしさのあまり、はっと唇を噛みしめた。
するとすぐにオリヴィエの囁きが耳に降りてきて、
「そんな風にしちゃダメ。 キスができなくなっちゃうでしょ。
それに、あんたの可愛い声、もっと聴かせて。」
噛んだ唇をオリヴィエの舌先でこじ開けられた。
また始まる、絡み合うキス。
あとはもう、抑えきれない声が次々とこぼれてしまう。
体を震わせたロザリアは、素肌がすっと外気に触れるのを感じた。
気が付けば、ロザリアが上半身に着けていたものは全て無くなっていて、同じように素肌のままのオリヴィエと触れ合っている。
彼の肌は心地よくて、暖かい。
それでも、わずかに不安になって、オリヴィエの腕を掴むと、彼は優しく微笑んで、ロザリアの額にキスを落とした。
大好きなオリヴィエの笑顔と、夢のサクリアをくれるキス。
「大丈夫。 私を信じて」
ロザリアの手から力が抜けたのを合図のように、オリヴィエの唇がふくらみを食んだ。
ロザリアはただ混乱していた。
いつかは、と思っていたけれど、まさかそれが今日だなんて。
オリヴィエの手はすでに明確な意思を持って、ロザリアに触れている。
それに、彼によって初めて与えられる快楽は、溺れてしまいそうなほど甘くて、抗うことができない。
胸の先端は、オリヴィエの指先で硬く立ち上がらされ、彼の吐息が当たるだけで、全身に痺れが来る。
舌先で転がされ、唇で摘ままれ、指先で擦られれば、自然と甘い息が零れて。
余すところなく全身を這い回る彼の舌と指に蕩かされていく。
「いや…。」
大きく足を広げた、その真ん中にオリヴィエの金の髪が揺れる。
彼の舌がロザリアの一番敏感な個所をゆっくり舐めあげているのだ。
今まで誰も触れたことのなかった個所。
そこをこんなにも間近に見られて、触れられて。
羞恥でおかしくなりそうで、何度も足を閉じようとしても、それ以上の力でオリヴィエに開かれてしまうのだ。
諦めて、彼のなすがままに委ねた。
「気持ちいい…?」
囁くオリヴィエの声にロザリアは首を振った。
わからない。
ビリビリと体中を駆け巡る刺激は快楽というには強すぎる。
制御できずに足が震え、指先まで伸びきってしまうような感覚。
しきりに頭を振り、ぎゅっとシーツを指を握って、刺激をやり過ごそうとしても、オリヴィエはまるでロザリアの弱いところを知り尽くしているように触れてくる。
オリヴィエの舌先が、慎ましく秘められていた花芯を暴いた時、ロザリアの全身を今までで一番大きな刺激が駆け抜けた。
「ああ…。」
声も出せずに、ロザリアはがくがくと体を震わせた。
下腹部が熱くなって、そこからもっと熱いものがどろりと湧き出してくるのがわかる。
身体の奥が疼いて、ロザリアに何かを訴えかけてくるのだ。
「すごくキレイだよ、ロザリア。」
頭までガンガンと心臓の音が響いてくる。
まるで別の意思を持って蠢いているようなその場所に、オリヴィエの指がゆっくりと入ってきた。
異物感にロザリアが眉を寄せると、
「キツイ…。 まだ無理か…。」
オリヴィエは指をロザリアの中に浅く埋め、軽く動かし始めた。
その間も舌先は胸の頂を舐め、花芯を掠めるように擦られる指先が、ロザリアに快楽を与え続けている。
奥から熱くなる体。
刺激を与えられるたびに、そこからはどっと蜜があふれてくる。
指を抜き差しするたびに聞こえる水音が恥ずかしい。
オリヴィエの前で、生まれたままの姿をさらして、一番見られたくないところまで見せて。
けれど、何度も駆け抜ける快感に、ロザリアは翻弄され続けていた。
「濡れてきたね。」
すっと指が抜かれてホッとしたのもつかの間、もっと太くて硬いものが、ロザリアの中へ入ってきた。
苦しくて、つい体を硬くすると、オリヴィエの眉が寄る。
「キツイって。」
言いながらオリヴィエはロザリアに激しく唇を重ねてきた。
舌を絡められ、ロザリアが思わず大きく息を吐くと、その隙に、ぐっと中のモノが奥へ進む。
「い、痛い…。」
こじ開けられるような痛みに、ロザリアは声をあげた。
けれど、この痛みが破瓜の痛みなのだと理解すると、あとは声を殺して堪えた。
好きな人に、大切なものを与える痛みなら、我慢できる。
無意識に手はギュッとシーツを握っていた。
「ねえ、あんたの中に私がいるの、わかる?」
きつく目を閉じていたロザリアは、その声で瞼を開いた。
ようやくロザリアの中にすべてを収めきったオリヴィエの額にも汗がにじんでいる。
なんとなく、彼の懸命な姿を見て、ホッとした。
不慣れなロザリアは面倒で、つまらなくて、嫌になってしまったのではないかと不安だった。
でも、オリヴィエはとても優しく、満足そうな顔をしている。
ロザリアは小さく頷いた。
「ん…。 すごくいいね。 このままでもイッちゃいそう。」
艶っぽい吐息交じりの声に、ロザリアのナカがギュッと締まる。
身体への刺激ももちろんだけれど、心への刺激も敏感に伝わるらしい。
彼の笑顔や言葉や、息遣いの一つ一つに、泣きそうなほどの喜びがあふれてくる。
けれど、それをどう伝えたらいいのかいいのかわからないロザリアは、ただ潤んだ瞳でオリヴィエを見つめることしかできなかった。
「お、オリヴィエ…。 わ、わたくし…。」
好き、と言いかけて、
「ロザリア…。 ああ、もう、可愛い。」
オリヴィエが体を倒し、唇を重ねてきた。
その拍子に、さらに奥をえぐられて、ロザリアがうめく。
体の中がオリヴィエでいっぱいで、苦しい。
でも、ずっとこうして繋がっていれば、彼の世界はロザリアだけになる。
二人で一つになる、という言葉の意味を、初めて理解できた気がした。
ゆっくりとオリヴィエの腰が動き始める。
ナカが擦れると、引き攣れるような痛みが伴うけれど、それはもう痛みだけではなくて。
気遣うようなオリヴィエの動きも、雨のように降るキスも。
なにもかもが愛おしい。
「あ、や。」
何か言いたくても、それはとても声にならず、ただ喘ぐだけ。
伝えたいことがたくさんあるのに。
今はただ、彼を感じることしかできなくて。
やがて、大きく突き上げたオリヴィエの熱がロザリアの中を満たしていく。
同時にまた唇を塞がれて、ロザリアの身体から力が抜けた。