女王試験155日目
ジュリアスは忍び寄る夜の気配に抗うように、書斎で執務に励んでいた。
聖殿にいつまでも残ろうとすれば、秘書官や職員たちに迷惑をかける。
書類さえ持ち帰れば、私邸でもできることは多い。
ましてや、女王試験という非常事態で、やるべきことは無尽蔵にあるのだ。
怠け癖のある守護聖に任せるよりも、自身がやったほうが早い…というのは言い訳がましいか。
「む。」
細かな文字がかすんで見え、ジュリアスはぎゅっと強く瞼を閉じた。
疲労がたまっているのは自覚している。
カチコチと鳴る時計の音が頭に響く、深夜2時。
ジュリアスは常日頃、自らで厳しく生活を律していて、睡眠時間もきちんと確保している。
当然、こんな時間まで起きていることは緊急時以外ない。
連日の睡眠不足で、精神的にもイラついているのか、今日も年少組のささいなミスで声を荒げてしまった。
眠らなければいけないのだろう。
けれど、眠りたくない。
あの夢を見るのが怖い。
今の幸せを覆されそうな気がするから。
そんなジュリアスの葛藤をあざ笑うように、わずかなスキをついて睡魔はやってきた。