きっと君を思い出す


「ジュリアス様?」
ハッと意識を取り戻すと、不安そうに青い瞳を揺らしているロザリアと目が合った。
彼女はキレイに巻いた巻き髪を背中に流し、見慣れた女王候補のドレスを着ている。
もちろん、指輪はない。

内心の動揺を抑えつつ、ジュリアスはゆっくりと今の状況を理解しようとした。
飛空都市の執務室。
明るい陽射しが差し込む窓には豊かな緑の葉が風にそよぎ、穏やかな午後の気配を感じさせる。
「すまぬ。 どうやらうたた寝をしてしまっていたようだ。」

白昼夢。
きっと、夢を見せられたのだ。
誰にかもわからないが、それは間違いないと確信できる。

深く息を吐き出しながら頭を振ったジュリアスに、ロザリアはさらに心配そうに眉を寄せ、
「お疲れなのではありませんか? 女王試験を続けることがご負担になるのでしたら…。」
「いや。 そうではない。」
たしかに通常の守護聖としての執務と女王試験の執務が重なっている現在、疲労が溜まっている。
すぐに試験を終わらせ、新女王を擁立するほうが、現女王にとっても宇宙にとっても望ましいのかもしれない。
新しい女王の新しい力は、宇宙の崩壊を止める唯一の術なのだから。

「アンジェリークは、どうしている?」
ジュリアスの問いにロザリアは少し驚いた様子を見せたが、すぐに笑みを浮かべた。
「先ほど、ルヴァ様のところへ行きましたわ。
 あの子、『わたしが女王になるから』って、今、ルヴァ様にいろいろ教わっているんですの。」
「そうか…。」
ルヴァとアンジェリークはやはり親しかったのだ。
あの夢の通りに。


「ジュリアス様。」
知らずに思いつめた顔でもしていたのか、ロザリアがそっとジュリアスの側に寄り添った。
「わたくし、幸せですわ。
 アンジェリークもルヴァ様も、みんな、祝福してくださって。」
潤んだ青い瞳がジュリアスをじっと見つめている。

「ロザリア…。」
自然と彼女の頬に指先が伸びる。
そうすることが当たり前のように、ごく自然に。
2人は唇を重ねていた。


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