きっと君を思い出す

女王試験114日目


ここはどこだろう。
臥せていた体を起こしたジュリアスは、あたりの荒涼とした風景に眉をひそめた。
まるで戦場跡のように、なにもかもが破壊されている。
岩のようなコンクリの塊から突き出した錆びた鉄筋。
散乱したガラスの破片や、機械の金属片。
めくれあがったアスファルトはあちこちが陥没していて、まっすぐ歩くことさえ難しそうだ。
灰色の空には、鳥の姿もなく、小さな虫の気配すらしない。
ましてや人は…。

ジュリアスは軽く頭を振り、ゆっくりと立ち上がると、再びあたりを観察し始めた。
立ち上がってみても、目に入る光景はまるで変わらない。
地平線まで広がっているのは、『死の世界』。
そんな言葉が脳裏に浮かんで、背筋が凍りついた。
ぬるい風がジュリアスの長い髪をわずかに揺らして、額にじんわりと汗がにじむ。
なにかを確かめるように、一歩、足を踏み出すと、カラカラに乾いたコンクリの粉塵が素足の指の間に絡みついた。
指を動かせば、じゃりじゃりと不快な感触がする。
なにかがおかしい。
熱を持った砂と埃で、目と喉が痛むなか、ジュリアスは少しずつ冷静を取り戻していた。

さっきまで、いつも通り、ベッドで眠っていたはず。
だとすれば、これは夢、なのだろう。
悪い、夢。
腑に落ちて、どこかホッとしている自分に気づく。
相変わらず足元の砂は緩い風に流れて、生き物のようにジュリアスの指や足首に纏わりついてくる。
無機質な感触は熱いのに、どこか冷たく、ひたすら無音。
夢だとわかっていても、このリアルさは、少し奇妙で…息が詰まる。
息が、クルシイ。


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